目で見ることのできないホルムアルデヒドは嗅覚でしか知覚できず、厚生労働省の指針値である100μg/㎥(0.08ppm)以下の状態ではほとんど認識できません。しかし、認識されないまま生活を続けると、発がんリスクが高まります。ホルムアルデヒドの対策は、ウイルスなどと同じく、事前の予防や対策が重要です。
こ生涯(0〜70歳)毎日暴露した時に予想される発ガンリスクの上限
上咽頭ガン・・・0.011ppm ホジキンリンパ腫・・・0.017ppm 白血病・・・0.057ppm
ガン発症率
0.08ppm:100μg(室温23℃で厚生労働省が定めている基準値)=100人に1人
0.04ppm:50μg=250人に1人
2歳児未満の乳児のリスク=10倍/16歳未満の若年層のリスク=3倍
日本の厚生労働省よりシックハウス症候群対策として室内濃度指針値(100μg/㎥(0.08ppm))が設けられ、建築基準法によりホルムアルデヒドを放散する建築材料の使用制限が設けられています。 しかし、各国の専門機関などでは、ホルムアルデヒドを発がん物質とし、世界保健機関(WHO)の下部機関である国際がん研究機関(IARC)においてヒ素やアスベスト、カドミウム、六価クロム、プルトニウムなどと同じ発がん性リスク一覧のグループ1(ヒトに対する発がん性が認められる化学物質)に挙げられています。国内でも、日本産業衛生学会では発がん物質として、第2群Aに記載するなど、発がん物質としての認知が非常に高まっていますが、その対応が未だ不十分であることは否めません。
ホルムアルデヒドは、人が住む環境や、生活の中で使用しているものの多くに含まれています。
ホルムアルデヒドは自動車の内装材からも放散されており、シックハウス症候群と同じでホルムアルデヒドなどの化学物質が原因となり、体調不良や精神が不安定になるなど、シックカー症候群を引き起こします。これは、運転中に発症した場合、事故にもつながりかねない要注意の症状です。米国環境保護局(EPA)も、車内の空気の汚染は5大環境公害リスクのひとつとしているほど、深刻な問題です。
接着剤や可塑剤、樹脂、プラスチック類、製造過程で使用された残留化学物質、車内での喫煙などからホルムアルデヒドは放散されています。
中でも、自動車の内装材に使われるフェノール樹脂やメラミン樹脂などの合成樹脂は、原材料とホルムアルデヒドを反応させ製造します。しかし、原材料と反応しきれずに樹脂内に残ったホルムアルデヒドは放散されてしまいます
JAMA(一般社団法人 日本自動車工業会)のWEBサイトで、自動車の製造後ホルムアルデヒドの経時での変化と、温度による依存性をレポートしています。
それによると、製造後1年以上経過しても、既存濃度の40%ものホルムアルデヒドが放散を続けていることがわかります。また、温度依存性のレポートから、35℃の室温になった場合、既存濃度の200%のホルムアルデヒドが車内に充満していることがわかります。
車室内のホルムアルデヒド濃度は、一般的に時間とともに低減していきますが、1年後には約40%の放散量を維持し、その後も長期にわたり放散を続けます。
車室内のホルムアルデヒド濃度は、車室内の温度上昇に伴って上昇、炎天下で駐車している自動車の室内では、3〜4倍の濃度になっていることが分かります。
ホルムアルデヒドは温度により濃度が変わってしまうため、「Ct=Ct2×1.09(t-t2)」という温度補正計算が必要になり、これを簡単に表現すると室温が1℃上昇するたびに係数である1.09に温度差が乗算されるというものです。
実際に冬季に計測したマンションのホルムアルデヒド濃度で検証してみました。
上記は基準値以下の数字となっていますが、計測当日の室温は17℃であったため、室温が上がると数値は変化します。例えば、室温が25℃に上昇した場合のホルムアルデヒド濃度を温度補正計算によって算出してみると
※上記のように、指針値の半分ほどのホルムアルデヒド濃度でも、室温が25℃に上昇するとほぼ指針値に近い数字となり、換気不足やホルムアルデヒドの放散要素が増えることで(例えば家具を新しく配置し、ホルムアルデヒドが放散しているなど)で、指針値を超えてしまう可能性があります。
検知最下限まで数値が下降。温度が上昇した場合でも、基準値より大幅に低い濃度と考えられます。
※光明理化学社製検知管「ホルムアルデヒド検知管710」使用。検知最下限以下のため、0.01ppm以下と表記。